
い ま
現在を担う
3代目社長の歩み
創業100年以上の歴史を持つ製菓会社 八千代堂
〜 三代に継承されるマシュマロ一筋の道 〜
八千代堂に入社
祖父である2代目社長一博氏の背中を見て育った3代目社長 堀江 聡(そう)氏は、幼稚園のころから作業場で職人さん達と台車で遊んだり、事務所で伝票を数えたりして遊んでいました。
小学校に入ってからは、休みの度に仕事の真似事をして手伝い、大学に入ってからも学校が休みの時には小遣い稼ぎをして過ごしました。
一度は外に出て働こうと食品メーカーに就職したが、24歳の時、「祖父の下でマシュマロ作りや経営をじっくり学ぼう」と思い至り、2代目一博氏が営む八千代堂に入社します。

写真 : 3代目になる聡氏を我が子のように育んだ2代目一博氏と妻の文(フミ)さん
-3代目から見た2代目一博氏は、どんな方でしたか?
仕事のことを始終考えていて、実直でまじめな人でありとてもあたたかい心をもっている人でした。何ともいえないユーモアと人間的魅力でいつも現場で従業員を褒め回っていましたね。
戦前の生まれだったので軍隊にも行き、また創業者から2代目を引き継ぐにあたり大変苦労も多かったのですが、その経験から『人を大切にする』という八千代堂の在り方の基盤を作っていったのだと思います。
それは今の自分にとっても、大事にしている経営の在り方です。
また、マシュマロ製造においても、手作業の良いところは残しながらも機械化を進め、省力化と同時に品質を年々向上させていったこと。
当時は、まだ卵型のマシュマロばかりだったものから、可愛い動物のキャラクターをマシュマロにしていったのも、2代目社長 一博の大きな功績だと思います。
「もっとマシュマロの味や食感が良くなるには、どうしたらいいか?」と常に考え続け、実験し続け、日々メモに書き記していた職人気質で探求心のある姿が印象にあります。
そもそもマシュマロ自体、つくるのが難しかったと思います。当時の日本では先例もほとんど無い中で、八千代堂にしか作ることができない独自の製法を手探りで試行錯誤して見出し、今現在のマシュマロの最初の基盤を築いてくれたことに、とても感謝しています。
とにかく無茶苦茶厳しく、僕を仕込んでくれました。周りの従業員が「社長、厳しすぎますよ!」と諫めるくらいでしたね。
それに対し「もう何年も一緒にやれるわけじゃないから、後で聡が困らないように、今とことん教え込んでおくねん!」と話していたそうです。

経営者として歩き出すまで
じっくり経営を学んでいこうと漠然と思い描いて入社した4年後、2代目一博(祖父)が病に倒れました。ある日の深夜に吐血して倒れた一博氏は救急車で運ばれ、僕も祖母 文(フミ)と同乗しました。
その救急車の中で祖母 文(フミ)が、「明日からあんたの時代やで!腹決めてやるんやで!」と僕に言ったのです。
それまでは現場の仕事しかしていなくて、まだ経営の「け」の字も知らない僕だったのですが、とにかく「やってやる!」と決心し、意気込んでいたのを覚えています。
ところが翌年、今度は長年会社を支えてきた工場長が急死しました。今度は経営だけでなく、商品の方も全部責任を持たなければならなくなったんです。
機械一つが故障しただけで、立ち往生しました。無駄を省こうと工夫すると工程が滞ってしまって。取引先からは「八千代堂さんは味が落ちた」とこぼされたこともあります。
思いがけないタイミングで二本柱を失い、突如として老舗の看板が両肩ににのしかかってきたと思いますが、当時はいかがでしたか?という問いに対し、「あまりにしんどく、当時の記憶がほとんど無いです・・」と堀江 聡 社長は苦笑。
「取引先とどうつき合えば良いのか」「社員をどうまとめればいいのか」・・・毎日のように病院のベッドに横になる一博氏を訪問し、とにかく質問攻めにしていました。
引き継いだ当初は、ただただ必死で。会社の代表として肩に力が入りまくって、いろんな事をやらかしていきましたね。
従業員との軋轢や商品のクレーム、機械のトラブルなど、いちいち初歩的なところから頭をぶつけながら進んできた感があります。
そういった状況から抜け始めて少し気持ちに余裕ができた頃から、まず「ここで働けて良かったな」と感じてもらえる会社を創ろう!と思ったのが、自分自身の経営者としての本当の始まりだったと思います。
⇩社長インタビュー動画①⇩
マシュマロの可能性を広げる
数年して経営が軌道に乗り始めてから「マシュマロは様々な菓子の中でも格下に見られている」ということを感じるようになりました。
「小さい頃に食べた記憶があるけれど、あまりおいしくなかった」と言う人の声を耳にすることも多々ありました。
本当は、食感も見た目も美味しさも、もっと楽しめるお菓子なのに・・・。
周囲でも、マシュマロ自体あまり好きじゃないとか苦手だと言う人も居ましたが、それでも八千代堂のマシュマロをひと口食べると、「マシュマロってこんなに美味しいんだ!」と感激してくださる方が多かったのです。
長年培ってきた製法で丁寧に作っている八千代堂のマシュマロの美味しさには、やっぱり自信がありました。
そこでマシュマロを広げるために、もう少し付加価値が必要だと考えました。
マシュマロ自体が美味しいことはもちろんですが、犬や猫、ハロウィーンにはカボチャやお化け、クリスマスにはサンタの型など、思わず「可愛い!」と言われるようなデザインにこだわったんです。
可愛らしいマシュマロを手に取った子ども達は「食べたらかわいそう」と言ってくれました。

それ以外にも、多くの人に本来のマシュマロの味を楽しんでもらいたくて、添加物をなるべく入れずに素材にこだわり、アレルギーを持つ子どものために小麦粉や卵を使わない商品も開発したりました。
また、2007年にはネット販売を開始。自社ブランドの「ましゅまろキッチン」では、一般の流通では販売できない、賞味期限は短いけれど素材の鮮度にとことんこだわった商品や、オリジナルギフトなども展開していきました。
そして、2019年に生み出したのが、「フィシュマロバアアアアン!!」です。
日本でも、キャンプやバーベキューでマシュマロを焼く人も多くなり、大人も子どももマシュマロを楽しめるように、魚の形をした商品を開発しました。製造技術を駆使して、火で炙っても美味しくなるように工夫もしまた。
この商品は、SNSを中心に人気を呼んで、メディアも多く取り上げてくださる様になりました。
他にもコーヒー、きな粉、抹茶、パッションフルーツや、生地自体に新鮮なイチゴをたっぷり使ったものなど、豊富な味のバリエーションを展開したり、干支のデザインをしたものなど、日本の行事や贈り物にも合うマシュマロを開発してきました。
世界各地のマシュマロを食べてきましたが、日本のものが間違いなく一番おいしいです!海外の方にも、この日本の味やクオリティを知って欲しいですね。
まだまだ、可能性がたくさんあるマシュマロ開発にワクワクしています。
⇩社長インタビュー動画②⇩

3代目 堀江 聡 社長の現在の想い
先ずは、日々一緒に働く従業員の皆様に思っていることとして。私も含めて、八千代堂で働いている人は、いつか必ず何らかの理由で去ることになります。
その時に「色々大変なこともあったけど、ここで働けて良かったなぁ」と、八千代堂で仕事ができて成長したな・・充実していたな・・と感じてもらうことが出来たとしたら、最高だなと思っています。
それを目標に、先代から受け継がれてきた『人を大切にする』ということを日々取り組んでいます。
そして経営者として年月が進むにつれて、「マシュマロを通して世の中を元気にする」というミッションが私の内側から生まれてきました。
この代々受け継いできた「八千代堂のマシュマロ」という唯一無二のものに対する想いは、今も日に日に高まってきています。
うちのマシュマロを購入してくださったお客様やその大切な家族、友人の方々がマシュマロを食べるとき、「なんか可愛い~」「可愛すぎて食べられない~」「ぷにぷにしてる~」「マシュマロってこんなに美味しいんだ~」という感激や喜びの会話や笑顔が自然と生まれます。
そして、私もその喜びの声を聞いた時、マシュマロを食べてくれた方々と自分の内側に喜びのエネルギーが高まり循環することを、何度となく経験してきました。
想いを込めて丁寧につくった八千代堂のマシュマロから、喜びのエネルギーが周りに伝播していく。
マシュマロひとつには、それだけの尊い力があるということを、何十年もやってきて、お客様の声などを聞いていると感じます。
この激動の時代だからこそ、ささやかであってもマシュマロひとつから感じる喜びのエネルギーが、より大切なものになるんじゃないかなと思っています。

「尊さ一つを世に博める」
最近はマシュマロを通して、少しでも世の中を平和にすることができるのではないか?と感じているんです。
マシュマロのもつ質感、常に角が立たない柔らかな曲線、そして、和菓子にも通じる後口の清々しさ、五感を通して感じるのは調和された結びの世界。
何かそういった柔らかな優しい心が、一人一人の心の内に人知れず宿り、調和した心の世界が外の世界にも現れていくように感じます。
今もこれからもマシュマロ一筋にこだわって、「心が優しく満たされること」を届けられるマシュマロづくりを常に目指し続けます。
心が本当に満たされ笑顔になったとき、きっと私たちは人と争うことをしません。そんなふうに平和をもたらす一翼を、ささやかな瞬間でも、うちのマシュマロが担うことが出来ればとても嬉しいことです。
それが冒頭にある、「尊さ一つを世に博める」という言葉に込めている想いです。
それは、この尊さを秘めているマシュマロを世界に広く知ってもらうことであり、「尊さ」「一つ」「博める」という言葉は、創業者の尊一と2代目の一博の名に込められている代々の想いでもあります。
そして何より、仕事とはとても「尊い」ものだという認識を、年を重ねるごとにより深く感じています。
私たちが、この尊い存在であるマシュマロを世に送り出すお手伝いを通じて、その結果としてお客様に喜んでいただく。
そういう「尊い仕事」によって自分自身が生かされているという、とても有り難い循環に在るということを実感しています。


